趣旨

今日の科学・生産技術の進歩はめざましく、成果は医療の領域にまで及んでいます。その結果、感染症など多くの急性疾患が克服され、先進工業国ではかってないほどの長寿が達成されました。


 しかし、生の延長は死の解決ではなく、人は今でもいつかは老い、病み、臨終の時をむかえます。この、老・病・死にまつわるさまざまな問題は医療従事者による知識や技術の提供のみでは解決できない奥深い社会的な要素を含み、患者・市民の側からの主体的な問題提起や参加が望まれます。


 日本ホスピス・在宅ケア研究会は、がんや在宅ケアなど今日的な医療や福祉の諸問題について専門家と市民が同じ高さの目線で考えるために1992年に設立されました。痛みや不快な症状の除かれた安らかな「ホスピスケア」や、十分にサポートされた豊かな「在宅ケア」は、私たちの願いです。


 日本ホスピス・在宅ケア研究会は、市民に向かって開かれた会です。特定の思想・信条・権威にかたよらず、集う人々の多様で自由な発想に基づいて運営されます。本会に関係するほとんどの会合を公開とし、市民参加を保障します。医療従事者はもとより、患者、市民、教育者、宗教家、関連分野の研究者など、さまざまな立場の方々の参加を心から希望します。私たちは、以下のことがらについて実践と理解を深め、より良い医療・福祉社会をめざします。

目的

  1. がんの緩和ケアについて、その理念や方法を研究・確立していきます。また、適切なケアが全国であまねく実践されるよう、啓蒙普及活動に努めます。
  2. がんのみならず、認知症や難病などによる終末期のあらゆる諸像にも焦点をあて、その人らしい最期が迎えられるためのあり方、人生の締めくくり方を支え、システムづくりや人材育成に努めます。
  3. 在宅ケアや高齢者の介護問題など、市民にとって切実な問題の解決に取り組み、提言します。 
  4. 医療に関係する倫埋的問題、例えば、インフォームド・コンセント、リビングウィル、安楽死・尊厳死などや先端医療の倫理的側面などについても研究、提言していきます。